今回はちょっと趣旨を変えて、妊娠中に摂りすぎが危険と言われる『塩分』について正しい認識をご紹介したいと思います。
摂りすぎが怖いというのと同時に塩分不足も怖いことなので、適切な塩分摂取をできるようにしたいものです。
そもそも塩分ってなに?
塩分とは、身体の中で欠かせないミネラルのひとつで『ナトリウム』というのが正式な名前です。
わたし達人間の体内では『水分の浸透圧を保つ』というのが細胞を守るために絶対に必要なもので、そのためのバランスをカリウムとともにとっているのがナトリウムの働きを簡単に説明したものと言えますが、これだけだと良く分からないですよね。
これは『ナトリウムは水分を結びつきやすい』という性質が体内に水分をとどめておく役割を果たすのに役立っています。その一方でナトリウムが過剰にあり過ぎると水分が必要以上に体内にとどまってしまう『むくみ』が起こってしまうという状態になります。
そのために水分過剰になってむくみが起こっているとカリウムを積極的に摂ることでナトリウムとカリウムのバランスを取ることが大切になるんですね。
また妊娠中の場合はお腹の赤ちゃんを守るために胎盤を子宮内壁に安定させたりする働きがある『黄体ホルモン』(プロゲステロン)の分泌量が増えるため、むくみが起こりやすくなります。これは黄体ホルモンにも水分の排出を阻害して水分をとどめる性質があるためです。
むくみの妊娠中の身体への影響は?
妊娠中にむくみが起こると、血管を圧迫して血流が悪くなります。つまり、血液を必要なところまで届けるために心臓がポンプとして送り出すのに『より高い圧力が必要になる』高血圧という状態になります。
そうなると赤ちゃんに栄養を届ける胎盤に十分な血液が届けられる働きを邪魔してしまうため、赤ちゃんに十分な栄養が行き渡らなくなってしまう可能性が高まります。
これがさらに悪化すると低体重出生児や奇形児のリスクが数倍にも跳ね上がってしまい、最悪の場合は酸素供給まで滞って胎児死亡につながってしまうこともあるので『むくみ(浮腫=ふしゅ)は妊婦検診の検査重要項目になっている』ということなんですね。
ここまでで大前提として塩分(ナトリウム)が持つ性質と役割が分かっていただけたと思います。
簡単に言うと、塩分の摂りすぎがあると妊娠中のホルモンバランスの変化とともに体内に水分を過剰にとどめてしまい、むくみが起こりやすい。ということなんです。
では、ホルモンバランスの変化とともにむくみの原因になりやすい塩分は『身体には欠かせないけどどのくらいまで摂るべきなの?』という疑問が出てくると思います。
次の段落ではその点についてもう少し詳しく、具体的にイメージしやすい形でご紹介したいと思います。
妊娠中に塩分はどのくらい摂って良いの?
妊娠中に一日で摂って良い塩分は『7.5g』が上限として設定されています。
この数値は、厚生労働省が設定している推奨値ということで、厚労省のホームページに記載されていますが、ひとことで7.5gと言われても分かりにくいというか『具体的な量がイメージしにくい』ですよね。
料理用のアルミで出来ている計量スプーンの大さじが『フチすり切り1杯で16gの塩』を取れるということなので、大さじ半分ぐらいが妊婦が一日に摂って良い塩分ということになりますね。
もちろん、最近では『天日塩』や『海洋ミネラルをたっぷり含んだ塩』なども販売されているので、塩=純粋なナトリウムというわけではありませんが、大まかな目安にはなるかと思います。
ちなみに、カップラーメンの『カップヌードルしょうゆ味』のスープに含まれている塩分は1杯あたり4.1gにもなるため、妊娠中は特にですが、減塩中の食生活を意識されている方は麺は食べてもスープは飲み干さない方が良いと思います。
塩分が不足したらどうなる?
塩分が不足するとどうなるかというと、脱水症状が起こり、痙攣やめまいなどが起こります。
体内の水分はナトリウムによってつなぎとめられていると言っても良い状態なので、妊娠中はプロゲステロンの働きもあって通常よりも塩分控えめを心がけることが大切とはいえ、それでもやっぱり塩分不足は危険です。
妊娠中も塩分不足はやはり怖いことなので、適切な量の塩分摂取は大切になります。また、塩分不足が怖いだけではなく、純粋な塩分である『化学塩の“食卓塩”』よりも他のミネラルも摂ることができる『天日塩』の方が腎臓や肝臓にかかる負担を抑える事ができます。
塩分不足はやはり怖いことですけど『塩分ならなんでも良いというわけではない』ということが大切ということは覚えておいて良いでしょう。