妊娠中、「切迫早産」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。少し怖い響きに、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「お腹の張りがあるけど大丈夫かな?」「もしかして切迫早産かも…?」と、心配になる気持ち、よく分かります。
切迫早産とは、妊娠22週から37週未満(正産期より前)に、早産になりかけている状態のことです。お腹の張りや痛み、出血などの症状があり、このままいくと早産になってしまう可能性がある、という状態を指します。
切迫早産と診断されても、必ずしも早産になるわけではありません。適切な治療や安静によって、妊娠を継続できるケースもたくさんあります。
この記事では、切迫早産はどのような状態なのか、どんな原因や症状があるのか、そして赤ちゃんのためにどんな対応がされるのかについて、あなたの不安に優しく寄り添いながら、分かりやすくお伝えします。
切迫早産について正しく理解し、体のサインに気づき、赤ちゃんのために適切な対応をとるためのヒントを見つけてくださいね。
- 切迫早産とは?早産になりかけている状態
- なぜ起こる?切迫早産の主な原因とリスク要因
- どんな症状に注意すべき?切迫早産のサインを見逃さないで
- 切迫早産と診断されたら?赤ちゃんのために行われる対応
- 切迫早産かな?と思ったら、迷わず医療機関へ連絡を
- まとめ:体のサインに気づき、専門家と一緒に乗り越えよう
切迫早産とは?早産になりかけている状態
「早産」とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの期間に赤ちゃんが生まれてしまうことです。そして、「切迫早産」は、この早産になりかけている、「今はまだ生まれていないけれど、赤ちゃんが生まれてしまうリスクがある状態」を指します。
具体的には、妊娠22週以降に、以下のような状態が見られる場合に「切迫早産」と診断されることがあります。
- お腹の張りや子宮収縮: 定期的にお腹が張る、痛みを伴う子宮収縮がある。
- 子宮頸管(子宮の出口)の変化: 子宮頸管が短くなっている、または子宮口が開き始めている。
- 出血: 性器出血がある。
- 破水: 赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて羊水が流れ出てしまう。
これらのサインが見られたら、赤ちゃんが生まれるのを少しでも遅らせるために、安静にしたり、お薬を使ったりといった対応が必要になります。
なぜ起こる?切迫早産の主な原因とリスク要因
切迫早産は、様々な原因が複合的に絡み合って起こることが多いです。原因が特定できない場合もあります。
原因の種類 | 具体的な内容 | ポイント |
---|---|---|
感染症 | ・腟からの細菌感染が子宮内に広がり、子宮内膜炎や絨毛膜羊膜炎を引き起こす。 ・これにより、子宮の収縮が誘発されたり、卵膜が弱くなって破水しやすくなったりする。 |
自覚症状がないこともあります。妊娠中の感染予防や、異常を感じたら早期に相談することが重要です。 |
子宮の異常 | ・子宮頸管無力症(痛みや自覚症状なく子宮口が開いてしまう状態)。 ・子宮筋腫や子宮奇形など、子宮の病気や形に異常がある場合。 ・過去に子宮の手術を受けたことがある。 |
子宮頸管無力症は、進行すると早産を避けられなくなるため、診断された場合は子宮口を縛る手術(頸管縫縮術)が行われることもあります。 |
胎盤や卵膜の異常 | ・常位胎盤早期剥離(妊娠中に胎盤が子宮壁から剥がれてしまうこと)。 ・前期破水(陣痛が始まる前に卵膜が破れてしまうこと)。 ・前置胎盤(胎盤が子宮口を塞いでいる状態)。 |
これらの状態は、切迫早産の引き金となる可能性があります。 |
多胎妊娠 | 双子や三つ子など、複数の赤ちゃんを妊娠している場合、子宮が大きくなるのが早く、張りやすい傾向があります。 | 子宮への負担が大きいため、早産予防のために管理入院が必要になることも多いです。(→<管理入院の記事も参考に) |
ママの体の状態・持病 | ・妊娠高血圧症候群(→妊娠高血圧症候群の記事も参考に) ・妊娠糖尿病(→妊娠糖尿病の記事も参考に) ・腎臓や心臓の病気 ・感染症(風邪、インフルエンザなど) ・高齢出産(35歳以上)、若年妊娠 |
これらの要因が、体に負担をかけ、切迫早産のリスクを高めることがあります。 |
生活習慣・環境 | ・過労、ストレス ・喫煙 ・栄養不足 |
心身への負担が大きいと、子宮の収縮を招く可能性があります。 |
どんな症状に注意すべき?切迫早産のサインを見逃さないで
切迫早産の主なサインは、妊婦さん自身が感じられるものと、妊婦健診で分かるものがあります。日頃からご自身の体の変化に注意し、気になることがあればすぐに医療機関に相談することが重要です。
妊婦さん自身が感じやすいサイン
- お腹の張り: 休憩しても治まらない、規則的にお腹が硬くなる、張る回数が増える、張る時間が長くなる。お腹の張りが痛みを伴うこともあります。
- 腹痛: 生理痛のような軽い痛みや、キューっとした痛みなど。張りに伴う痛みの場合も、持続する痛みの場合もあります。
- 性器出血: 鮮血や茶色っぽい出血がある。量は少量の場合も、生理のように多い場合もあります。
- 前期破水: チョロチョロまたはドッと、生ぬるい羊水が流れ出てくる感じがする。尿漏れと区別がつきにくいこともあります。
- いつもと違う体調: なんとなく腰が重い、体がダルい、お腹が下がった感じがするなど、いつもと違う違和感。
妊婦健診で分かるサイン
- 子宮頸管長の短縮: 経膣超音波検査で子宮頸管の長さが短くなっていることが分かります。
- 子宮口の開大: 内診や経膣超音波検査で子宮口が開き始めていることが分かります。
- 子宮収縮の確認: お腹に機械をつけて、子宮の張りや収縮の強さ、頻度を測定する検査(NSTなど)で確認します。
「お腹の張りはよくあることだから…」と軽視せず、休憩しても治まらない張りや、痛みを伴う張り、出血など、気になる症状があれば、必ずかかりつけの医療機関に連絡して指示を仰ぎましょう。 特に、妊娠週数が早い時期のサインは、注意が必要です。
切迫早産と診断されたら?赤ちゃんのために行われる対応
切迫早産と診断された場合、赤ちゃんの成熟度を高めるために、できるだけ長くママのお腹の中で育てるための対応が行われます。病状の程度や妊娠週数によって、対応は異なります。
病状の程度や対応 | 具体的な内容 | 目的 | 主な場所 |
---|---|---|---|
自宅安静 (軽度の場合) |
・ベッド上での安静。 ・家事や仕事、外出を控える。 ・シャワーは許可されることが多いが、入浴は禁止の場合が多い。 |
子宮への刺激を減らし、子宮収縮を抑制するため。 | 自宅 |
入院(管理入院) (病状が進行している場合や、より厳重な管理が必要な場合) |
・病院のベッド上での絶対安静。 ・子宮収縮を抑える薬(張り止め)の点滴や内服。 ・必要に応じて、感染を抑える薬や、赤ちゃんの肺の成熟を促す注射など。 ・定期的な検査(子宮頸管長測定、NSTなど)によるママと赤ちゃんの状態監視。 |
より厳重な安静と医療管理のもと、子宮収縮を抑制し、妊娠継続を目指すため。 | 病院 |
その他必要な対応 | ・感染が見られる場合は、抗生剤による治療。 ・頸管無力症の場合は、子宮頸管を縛る手術。 |
切迫早産の原因となっている問題があれば、それに対する治療を行います。 |
切迫早産と診断されて入院となった場合、「どうなるんだろう…」と不安になるのは当然です。しかし、それはママと赤ちゃんにとって、最も安全な環境で、赤ちゃんが少しでも長くお腹の中で育つための最善の選択です。医師や看護師さんの指示に従い、不安なことは遠慮なく相談してください。
切迫早産かな?と思ったら、迷わず医療機関へ連絡を
妊娠中の「お腹の張り」は生理的なものでもあるため、どの程度で病院に連絡すべきか判断に迷うこともあるかもしれません。
以下の場合は、自己判断せず、必ずかかりつけの医療機関(産婦人科)に連絡して指示を仰ぎましょう。
- お腹の張りが、休憩しても治まらない、またはどんどん強くなる。
- お腹の張りが、規則的に(10分おき、15分おきなど)繰り返される。
- お腹の張りに痛みを伴う。
- 性器出血がある(少量でも)。
- 生ぬるい水分が流れ出てくる感じがする(破水の可能性)。
- いつもと違う強い違和感がある。
特に、妊娠週数が早い時期(22週〜30週頃)のサインは、早急な対応が必要な場合があるため、迷わず連絡することが大切です。「大丈夫だろう」と自己判断せず、専門家の判断を仰ぎましょう。
まとめ:体のサインに気づき、専門家と一緒に乗り越えよう
切迫早産は、妊娠22週以降に早産になりかけている状態を指し、お腹の張りや痛み、出血といったサインが現れます。様々な原因で起こる可能性がありますが、適切な治療や安静によって、妊娠を継続できるケースもたくさんあります。
大切なのは、ご自身の体のサイン(特に、休憩しても治まらない張り、規則的な張り、痛みを伴う張り、出血など)に早く気づき、迷わず医療機関に相談することです。切迫早産と診断された場合も、医師の指示に従い、安静や治療を受けることで、多くの場合は赤ちゃんが元気に生まれる時期まで妊娠を継続できます。
不安な気持ちは一人で抱え込まず、医師や助産師さんに相談してください。専門家が、ママと赤ちゃんの安全を最優先に、最善の対応をしてくれます。体のサインに耳を傾け、専門家と一緒にこの状況を乗り越えていきましょう。心から応援しています!