妊娠中に起こりうる、いくつかの注意が必要な病気や状態について調べている中で、「常位胎盤早期剥離」という言葉を目にして、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。少し難しい名前で、どんな状態なのか分かりにくいかもしれません。
「常位胎盤早期剥離」とは、妊娠中(通常は妊娠後期)に、正常な位置にある胎盤が、赤ちゃんが生まれる前にお母さんの子宮の壁から剥がれてしまうことを言います。これは、ママと赤ちゃん दोनों にとって、命に関わる危険な状態となることがあります。
少し怖いお話に聞こえるかもしれませんが、常位胎盤早期剥離は、前兆となるサインが現れることもあります。危険なサインを知っておくことが、早期発見と適切な対応に繋がります。
この記事では、常位胎盤早期剥離とはどのような状態なのか、どんな原因や危険なサインがあるのか、そしてママと赤ちゃんのためにどんな対応がされるのかについて、あなたの不安に優しく寄り添いながら、分かりやすくお伝えします。
見過ごせないサインを知り、万が一の時に落ち着いて対応するための知識として、ぜひ参考にしてくださいね。
- 常位胎盤早期剥離とは?赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう状態
- なぜ?常位胎盤早期剥離の主な原因とリスクを高める要因
- 【見過ごせない危険なサイン】こんな症状が出たら、迷わず病院へ!
- 常位胎盤早期剥離と診断されたら?ママと赤ちゃんのために行われる対応
- まとめ:見過ごせないサインを知り、迷わず専門家へ
常位胎盤早期剥離とは?赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう状態
通常、胎盤は赤ちゃんが生まれてから、役目を終えて子宮から剥がれ落ちます。しかし、「常位胎盤早期剥離」は、赤ちゃんがお腹の中にいる間に、胎盤が子宮の壁から部分的に、または完全に剥がれてしまう非常に危険な状態です。
胎盤は、お腹の赤ちゃんに酸素や栄養を送るための、命綱のような存在です。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんに酸素や栄養が届かなくなり、赤ちゃんが苦しくなってしまいます。また、剥がれた部分から大量に出血し、ママの命にも関わる状態になることがあります。
常位胎盤早期剥離は、予測が難しく、進行が非常に早い場合があるため、産科的な緊急事態とされています。
なぜ?常位胎盤早期剥離の主な原因とリスクを高める要因
常位胎盤早期剥離がなぜ起こるのか、詳しい原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因がリスクを高めると考えられています。
- 妊娠高血圧症候群: 妊娠中に高血圧になる病気です。常位胎盤早期剥離の最も重要なリスク要因の一つとされています。高血圧により、胎盤の血管に負担がかかり、剥がれやすくなると考えられています。
- ママが喫煙者であること: 喫煙は、胎盤の機能に悪影響を与え、剥離のリスクを高めます。
- 過去に常位胎盤早期剥離になったことがある: 一度経験したことがある場合、次の妊娠でも起こるリスクが高くなります。
- お腹への強い衝撃: 転倒したり、お腹を強くぶつけたりした場合。
- 多胎妊娠: 双子や三つ子などの場合、子宮が過度に伸びることで剥離のリスクが高まることがあります。
- 高齢出産: 35歳以上の出産もリスク要因の一つとされています。
- 急激な子宮内容の減少: 羊水過多の妊婦さんで、急に大量の羊水が流れ出た場合など。
これらのリスク要因がある場合でも、必ずしも常位胎盤早期剥離が起こるわけではありません。しかし、これらの要因を知っておくことは大切です。
【見過ごせない危険なサイン】こんな症状が出たら、迷わず病院へ!
常位胎盤早期剥離は、予測が難しい病気ですが、以下のような危険なサインが現れることがあります。これらのサインが見られたら、時間外でも迷わず、直ちにかかりつけの医療機関(産婦人科)に連絡または受診してください。 一刻を争う状況となる場合があります。
危険なサイン | 具体的な状態と注意点 | なぜ見過ごせない?(危険性) | 取るべき行動 |
---|---|---|---|
激しい腹痛 (持続する痛み) |
・急に始まった、今まで経験したことのないような、お腹全体の強い痛み。 ・お腹がカチカチに硬く張っていて、痛みが引かない(陣痛のような規則的な痛みではなく、持続する痛み)。 ・お腹を押すと非常に痛がる(圧痛)。 |
胎盤が剥がれることによる出血が子宮内に溜まり、子宮の筋肉が強く収縮するために起こる痛みです。赤ちゃんへの酸素供給が低下しているサインでもあります。 | 直ちに病院へ連絡! (時間外でも救急外来へ) |
性器出血 | ・急に始まった性器からの出血。 ・量は少量の場合も、大量の場合もあります。 ・暗赤色の場合が多いですが、鮮血の場合もあります。 |
胎盤が剥がれた部分からの出血です。出血の量が少なくても、子宮内に血液が溜まっている場合もあります。 | 直ちに病院へ連絡! |
胎動の減少または消失 | ・普段感じていた胎動が急に少なくなった、または全く感じなくなった。 | 赤ちゃんに酸素や栄養が届かなくなり、赤ちゃんが苦しくなっているサインです。非常に危険な状態です。 | 直ちに病院へ連絡! |
その他の全身症状 | ・顔色が真っ青になる。 ・冷や汗、震え。 ・めまい、立ちくらみ。 ・息切れ、動悸。 ・血圧の低下、脈が速くなる。 |
大量出血により、ママがショック状態に陥っているサインです。 | 直ちに病院へ連絡! |
これらのサインは、切迫早産のお腹の張りや出血、前置胎盤からの出血など、他の原因の場合もありますが、自己判断は絶対にせず、常位胎盤早期剥離の可能性も考慮して、迷わず医療機関に連絡してください。
常位胎盤早期剥離と診断されたら?ママと赤ちゃんのために行われる対応
常位胎盤早期剥離が強く疑われる場合や、診断された場合、ママと赤ちゃんの命を守るために、緊急性の高い対応が行われます。
- 緊急帝王切開:
胎盤が剥がれると、赤ちゃんはすぐに酸素不足になってしまいます。そのため、赤ちゃんを安全に、そして一刻も早くお腹の外に出すために、緊急帝王切開による分娩が行われるのが一般的です。 - 大量出血への対応:
剥がれた部分から大量に出血している場合は、輸血が必要になります。また、出血が止まりにくくなる「DIC(播種性血管内凝固症候群)」という状態になることもあり、それに対する治療も行われます。 - 赤ちゃんへのケア:
早めに出生した赤ちゃんは、新生児集中治療室(NICU)などで専門的なケアを受けます。
常位胎盤早期剥離は非常に怖い病気ですが、医療機関で迅速かつ適切な対応が行われれば、救命できる可能性は高まります。危険なサインを知り、迷わず医療機関に連絡することが、命を救うための最も重要な行動です。
まとめ:見過ごせないサインを知り、迷わず専門家へ
常位胎盤早期剥離は、妊娠中に胎盤が子宮壁から剥がれてしまう、ママと赤ちゃん दोनों にとって命に関わる危険な状態です。予測が難しい病気ですが、妊娠高血圧症候群や喫煙などがリスクを高める要因とされています。
大切なのは、この病気の存在を知り、そして見過ごせない危険なサイン(特に、持続する激しい腹痛、性器出血、胎動の減少または消失)を知っておくことです。これらのサインが見られたら、時間外でも迷わず、直ちにかかりつけの医療機関に連絡または受診してください。
少しでも不安を感じたら、遠慮せず医療機関に相談することが、早期発見と迅速な対応に繋がり、ママと赤ちゃんの命を守るために最も重要な行動です。専門家が、あなたと赤ちゃんをしっかりとサポートしてくれます。
(参考: